メンバーインタビュー:今江 章宏(指導医)

寿都町立寿都診療所 所長・指導医
医師キャリア支援・広報センター センター長


北海道斜里町出身。09年北海道大学医学部卒業後、勤医協中央病院にて初期研修、北海道家庭医療学センターにて後期研修・フェローシップ。家庭医療専門医・指導医。

多種多様な働き方を支える組織づくりのために。

2021年4月、北海道家庭医療学センター(以下、HCFM)の内部に「医師キャリア支援・広報センター」が立ち上がりました。これは、従来採用活動やキャリア支援を担当してきた部門と、情報発信を担当してきた部門を統合したチームで、私たちのような指導医をはじめとする医師メンバーや事務メンバーによって構成されています。
今回、「医師キャリア支援・広報センター」ができた背景としては、今まで以上にHCFM所属医師のキャリア形成を組織一丸となってしっかりと支えていこうという狙いがあります。例えば、HCFMの専攻医は4年間の専門研修を修了したあと、フェローシップへ進んだり、スタッフ医師として法人に残る方もいれば、HCFMから離れて別のステージへと羽ばたく方もいます。ここを巣立つ理由はさまざまですが、なかには、ご自身が思い描く専門研修修了後のキャリア形成を、私たちが丁寧に拾い上げて柔軟な選択肢を提示することができず、残念ながら違う道を選択する医師もいます。
私たちとしても、せっかくHCFMで学んだ医師のみなさんにはできるだけ長くHCFMに留まって活躍してほしいと考えています。
家庭医とひと口にいっても、医師像はさまざまです。郡部の診療所、都市部の診療所、病院など、さまざまなセッティングがあります。また、所長・院長として経営管理を行いながら地域医療を支えるという働き方もあれば、子育てなど家庭との両立を図りつつ診療所医師として勤務するという働き方もあります。そうした多種多様な家庭医のあり方に対応できる組織に私たち自身が変わっていくこと、一人ひとりの医師に対してよりきめこまやかなサポートのできる体制づくりを行うことが、ひいては北海道や日本の家庭医療の発展に繋がると考えています。

タテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションを。

またこれは、私たち自身の反省点ではありますが、組織における内部コミュニケーションの充実を図ることが喫緊の課題となっています。HCFMは、北海道内はもとより全国にサイトが点在し、同期の専攻医であっても頻繁に集まることは簡単ではありません。ましてやコロナ下において、専攻医や指導医がオフラインで集まる機会が激減しました。
もちろん従来からオンラインによる学びの機会は数多く設けているので教育の質はきちんと担保していますが、組織運営に関わる率直なコミュニケーションという面ではやはり難しさもあります。そうしたなか、コミュニケーション不足が原因ですれ違いが起きることもありました。

組織の規模が大きくなり、拠点が広く点在することによって、組織全体の血の巡りが少し悪くなっていたかもしれません。
今回、採用・キャリア支援のチームと広報チームが一体となったことを機に、内部コミュニケーションより強固にします。専攻医、フェロー、指導医、スタッフ医師、コメディカルが、物理的な距離や立場の違いを越えてコミュニケーションをとれる仕掛けや仕組みづくりに、これからどんどん取り組んでいきたいと考えています。
これは「医師キャリア支援・広報センター」のプロジェクトではありませんが、HCFMの新しい取り組みとして、2021年4月から帯広協会病院(病棟研修施設)へ指導医が毎週出向き直接指導を行うことになりました。これにより教育プログラムの面では病棟研修と診療所研修とのさらなる連動が図れますし、さまざまな指導医と専攻医が対面で接することによって、内部コミュニケーションも活性化するでしょう。
今後はこのプロジェクトに限らず、いろいろなところでタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションがとれるような仕組みづくりを意識して手がけていきたいですね。組織の風通しがよくなることによって、教育プログラムの質や教育に対する満足度も向上すると思いますし、一人ひとりにマッチしたキャリア形成や組織定着につながるものと期待しています。

※ 勤務先・学年は全て取材当時のものです(2021年)