2021年度の上半期の学術活動

1) Published articles 2021
Original article:
Journal of General and Family Medicine (impact factorなし)
1. Kato, K., Tomita, M., Kato, M., Goto, T. and Nishizono, K. (2021), Prospective cohort study on the incidence and risk factors of emergency home visits among Japanese home care patients. J Gen Fam Med. https://doi.org/10.1002/jgf2.461
24 May 2021 → 引用2

【在宅療養中の癌患者の往診発生率は非癌患者の5倍】
先行研究 (Kuroda et al., 2020) では癌は往診発生の要因として有意ではないという結果もありましたが、本研究では癌は往診発生を約5倍増大させる因子であることを示しています。政策的implicationとして、癌患者の在宅医療に医療資源が多く必要になるという結果を踏まえ、これを支援するための施策が今後必要であることが示唆されます。

Letter to the Editor:
Journal of General and Family Medicine (impact factorなし)
1. Kato, K, Tomita, M, Kato, M, Goto, T, Nishizono, K. Cancer causes emergency home visits. J Gen Fam Med. 2021; 00: 1– 1. https://doi.org/10.1002/jgf2.472
21 June 2021 → 引用1
先行研究では「癌があっても往診は増えない」という結果が示されていましたが、この解析にそれぞれの症例の追跡期間が組み込まれていないことで、結果に歪みが生じているのではないか指摘したレターです。このレターには著者から返事があり、2つの研究における患者層の違いについて説明が加えられました。

2. Kato, K. (2021), Diagnostic significance of posterior pharyngeal lymphoid follicles in seasonal influenza. J Gen Fam Med. https://doi.org/10.1002/jgf2.475
24 June 2021
先行研究では横断研究によってインフルエンザの後咽頭濾胞が診断に有用であり、迅速検査が陰性の場合も診断に寄与すると報告されていますが、その診断的意義が過大評価されている可能性があると指摘したレターです。

3. Kato, K. (2021), Staff Numbers Matter. J Gen Fam Med.
https://doi.org/10.1002/jgf2.486
27 June 2021
日本の大学病院の総合診療部における英語論文の出版数の関連要因に関する研究において、英語論文の出版数と相関があった要素群が「大きな医局の特徴」を表している可能性があり、「研究活動を促進する要因」を適切に表しているとは言えない可能性があると指摘したレターです。

Geriatrics and Gerontology International (impact factor 2.730)
4. Kato, K. Association between in-home deaths and visiting nurse services. Geriatr. Gerontol. Int. 2021; 1. https://doi.org/10.1111/ggi.14236
11 July 2021 → 引用1
自治体データを用いたマクロデータ分析から、在宅看取りの要因として通所介護の職員数が影響しているという研究に対して、多変量解析で人口当たり医師数だけではなく、人口当たり訪問看護師数でも調整をすべであると指摘したレターです。このレターには著者から返事があり、訪問看護師数も調整している旨の説明がありました。

Family Practice (impact factor 2.267)
5. Kato K. (2021). Comment on ‘Upper airway cough syndrome may be the main cause of chronic cough in Japan: a cohort study’ by Yasuda. Family practice, cmab088. Advance online publication. https://doi.org/10.1093/fampra/cmab088
27 July 2021→ 引用1
airway cough syndromeの有病率について調べたYasudaの論文についてコメントしました。
Upper airway cough syndrome (UACS)は世界的に慢性咳嗽の主要な要因であると言われています。230名の慢性咳嗽患者のうち、146名がUACSと診断しているのですが、この診断フローでは「抗アレルギー点鼻薬で症状改善あればUACS」となっているのですが、咳喘息もこの治療で改善する可能性があり、UACSの有病率が過剰に推定されているのではないかと指摘しました。

6. Kato K. (2021). Family medicine viewpoint: seeing patients in the context of their lives. Family practice, cmab090. Advance online publication. https://doi.org/10.1093/fampra/cmab090
29 July 2021
投稿の対象となった研究はノルウェーの研究で、ノルウェーでは保険診療の償還をうけるためにICPC-2でのcodingが必須となっています。このretrospective cohort研究では、anxiety、depression、stress-related diagnosesがある患者ではsomatic symptomsが有意に多いということが示されています。さらに、社会的問題(z-code)も上記の精神的な診断がある人の方が有意に多いという結果でしたが、その割合が1.8%のみだったことからか、discussionではこのことには触れられてはいませんでした。しかし、家庭医の診療においてz-codeは過少に付与されることが多いという先行研究もあり、この結果の意義について「患者をそのcontextの中で診る」ことの重要性を今一度考えるべきであるということを指摘したレターです。

British Journal of General Practitioner (impact factor 5.386)
7. Kato K. (2021). Wellbeing is the key. The British journal of general practice : the journal of the Royal College of General Practitioners, 71(709), 346. https://doi.org/10.3399/bjgp21X716513
29 July 2021

対象となった論考では、家庭医は安全性を重視してdisease-orientedの診療をすべきか、患者のillnessの意味を患者とともに創造するという家庭医にも患者にもリスクのある診療をすべきか、という二項対立を軸に論が展開されていました。これに対してCassellを引用し、この二者は対立するものではなく、「患者のwell-beingに何が必要か」を考えながら、最適の配合を考えるのが家庭医の役割であるということを指摘したレターです。

※補足説明
Letterのカテゴリは以下の3つに大別されます。
・掲載論文へのコメントや意見
・ミニサイズの研究記述(例えばTable 0-1個、500語以内とか)
・両者のハイブリッドとして、掲載論文の結果に自分のデータで反論する場合