小児および成人におけるワクチン接種後のアナフィラキシー発生のリスク

-文献名-
McNeil, M. M., Weintraub, E. S., Duffy, J., Sukumaran, L., Jacobsen, S. J., Klein, N. P., Hambidge, S. J., Lee, G. M., Jackson, L. A., Irving, S. A., King, J. P., Kharbanda, E. O., Bednarczyk, R. A., & DeStefano, F. Risk of anaphylaxis after vaccination in children and adults. The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 2016, 137(3), 868–878. https://doi.org/10.1016/j.jaci.2015.07.048

-要約-
Introduction:アナフィラキシーは致死的になりうる急性の全身性の過敏反応だが、予防接種後のアナフィラキシーのリスクを定量化するにはデータが限られていた。アナフィラキシーの頻度は低いので、大規模な集団を調査しなくてはならず、ワクチン安全性データリンク(The Vaccine Safety Datalink ; VSD)がCDCなどと協働してそうしたデータを提供する組織である。過去にBohlkeらが1991−1997年のVSDのデータを分析して人口ベースのワクチン関連アナフィラキシーのリスクを調べたことはあるが、その後予防接種の推奨スケジュールの変更や、推奨年齢の拡大、新しいワクチンやワクチンの組み合わせもいくつか導入されたし、アナフィラキシーの症例定義やデータ収集、分析、組み入れを標準化するためのブライトン分類も開発された。さらに、VSD自体も合計9拠点に拡大し、より多くの集団におけるワクチンの安全性を監視できるようになった。そこで、(1)すべてのワクチンおよび個々のワクチンのアナフィラキシーの発生率を推定する、(2)アナフィラキシーの人口統計および臨床的特徴を説明する、の2点を目標に最新のVSDデータを調査し、ブライトン分類で分析した。

Method:9ヶ所のVSDサイトで2009年1月1日から2011年12月31日までの間にワクチン接種を受けた健康な小児および成人を組み入れた。ICD-9-CMに基づいてアナフィラキシーの可能性のある症例を特定し、2人の専門家がカルテレビューし、ブライトン分類に適合するかどうかを調べた。全ワクチン合計および個別ワクチンについて、アナフィラキシー発生件数および、ワクチンの数で調整した発生率を使って、ワクチン100万回あたりのアナフィラキシー発生率および95%信頼区間を計算した。

Results:2009年1月1日から2011年12月31日まで、2517万3965回(延べワクチン種類・回数ではなく接種回数にすると1760万6500回)のワクチン接種が行われた。ワクチン関連のアナフィラキシーは33件認められた(ワクチン100万回あたり1.31件;95%CI ,0.90-1.84、接種回数100万件あたり1.87件;95%CI,1.29-2.63)。1回の接種で複数のワクチンが投与されることが多いため、接種回数に基づくアナフィラキシー発生の割合は、延べ接種回数のそれより多かった。すべての症例がブライトン分類1か2だった。28例でアトピーの既往があり、そのうち3例はアナフィラキシーの既往、16例は喘息もあった。喘息ではないアトピーの10例中9例は、食物や抗菌薬へのアレルギーの既往があった。死亡例はなく、入院したのは1件だった。女性の方が男性より多かった(女性20名、男性13名)。年齢範囲は4−65歳だった。ほとんどのワクチンが他のワクチンと同時接種されたため、特定のワクチン接種後のリスクを定量化することは困難だった。アナフィラキシーの発症時間は30分以内が8例、30分以上120分未満が8例、2時間以上4時間未満が10例、4時間以上8時間未満が2例、翌日1件、記載なしが4件だった。

Discussion:今回の研究ではワクチン100万回あたり1.31例のアナフィラキシーを認めた。Bohlkeらの研究(100万回あたり0.65回)よりもわずかに高かったが、Bohlkeらの研究は小児と青少年に限定されていたし、多くの外来患者についてのデータが欠けていた。近年のアメリカでは、不活化3価インフルエンザワクチンが、桁違いに最も接種されているワクチンになっており、これを除くとアナフィラキシーの発生率が低いため、個別ワクチンのアナフィラキシー発生率を推定することができない。ワクチン接種後のアナフィラキシーの発症は稀だった。アナフィラキシーコードに加えてアレルギーコードでもデータ捕捉をしたが、それでもエピネフリンを使われなかったアナフィラキシー症例を見逃している可能性はある。アナフィラキシーを起こした33例中28例でアトピー性疾患の既往があり、特に喘息の既往はアナフィラキシーのリスクである。アナフィラキシーが生じた際にエピネフリンを使用されていたのは45%(15例)にとどまっていた。アナフィラキシーは稀ではあるが、数分以内に生じるし、起こすと生命を脅かす性質があるため、ワクチン接種者はアナフィラキシーのマネジメント手順を準備しておく必要がある。

【開催日】2023年10月4日(水)